乳がんについて

  • HOME > 
  • 乳がんについて

乳がんとは

乳がんとは乳がんとは、乳腺組織に発生するがんのことを指します。現在、国内の女性の9人に1人が生涯のうちに一度は乳がんを発症しています。
女性であれば誰にでも発生しうるがんですが、年代別では30~60代での頻度が高くなります。他のがんと同様に、命をおびやかすことのあるがんです。早期発見・早期治療によって治癒が期待できますが、その早期における症状が少なく、乳がん検診で定期的にマンモグラフィや超音波検査などを受けることが大切になります。

【乳がんの症状】
初期症状はない?

乳がんの初期症状としてよく知られるのが「しこり」です。またそれ以外にも、以下のような初期症状が見られることがあります。
ただ、そもそも乳がんは初期症状に乏しいがんであるため、これらの症状がないから乳がんではない、とは言い切れません。

しこり

しこりもしご自身で触ったときにコリコリとしたしこりが生じている場合には、乳がんが原因になっている可能性があります。ただ、正常な乳房であっても、一定程度、コリコリとした感触がするため、セルフチェックだけでの自己診断は厳禁です。
すぐに受診し、医師の診断を受けましょう。

乳頭の赤い腫れ・ただれ

乳頭に赤い腫れがあったり、ただれが生じている場合にも、乳がんを疑う必要があります。

乳房の皮膚の潰瘍・ひきつれ・しわ

乳房の皮膚の潰瘍、ひきつれ、しわは、がんがある程度進行して現れることの多い症状です。

乳房の形が変わる

乳がんの発生によって、乳房のボリュームが増すことがあります。左右の乳房の大きさに差がないか、あるいは差が広がっていないかチェックすることが大切です。

血のような分泌物

乳頭から赤い、血が混じったような分泌物が出たときも、乳がんが疑われます。

乳がんの原因

乳がんが発生するはっきりとした原因は、未だ解明されていません。しかし、以下のようなリスク要因が絡み合い、発症に影響しているものと考えられます。
当てはまる項目が多いという方は、乳がんになりやすいと言うことができます。

  • 初経年齢が低い
  • 閉経年齢が遅い
  • 出産経験がない
  • 初産年齢が遅い
  • 授乳歴がない
  • 閉経後に太った
  • 飲酒の習慣
  • 第1度近親者(親子、姉妹)の乳がんの家族歴がある
  • 良性乳腺疾患の既往歴がある

良性乳腺疾患とは、乳管内乳頭腫、線維腺腫、葉状腫瘍、(乳腺症)などのことを指します。

乳がんのステージと生存率

乳がんのステージ、また各ステージでの生存率をご紹介します。

ステージ がんの状態・転移の状況 5年純生存率 10年純生存率
0期 非浸潤がんか、またはパジェット病でごく早期のがん 100.00% (100.00%)
Ⅰ期 大きさが2センチ以下であり、リンパ節や他の臓器に転移していない 98.9% 94.1%
ⅡA期 大きさが2センチ以下で同じ側の腋の下のリンパ節は固定されておらず動く、またはがんの大きさが2~5センチでリンパ節や他の臓器への転移がない 94.6% 85.8%
ⅡB期 大きさが2~5センチで同じ側の腋の下のリンパ節に転移し、そのリンパ節は固定されておらず動く、または大きさが5センチ以上でリンパ節や他の臓器への転移がない
ⅢA期 大きさが5センチ以下で同じ側の腋の下のリンパ節に転移し、そのリンパ節は固定されて動かない・リンパ節が互いに癒着している、または腋の下のリンパ節には転移はないが胸骨の内側のリンパ節には転移している、もしくはがんの大きさが5センチ以上で同じ側の腋の下や胸骨のリンパ節に転移がある 80.6% 63.7%
ⅢB期 大きさやリンパ節への転移の有無に関わらずしこりが胸壁に固定されていたり、がんが皮膚に出ていたり、皮膚がむくんでいたり、皮膚が崩れていたりする
ⅢC期 大きさに関わらず同じ側の腋の下のリンパ節と胸骨のリンパ節の両方に転移ある、または鎖骨の上下の位置にあるリンパ節に転移がある
Ⅳ期 大きさやリンパ節転移の状況に関わらず他の臓器への転移(骨・肺・肝臓・脳等への転移)がある 39.8% 16.0%

5年純生存率:院内がん登録2014-2015年5年生存率集計P45 国立がん研究センター(2023年3月)
2014-2015年本文(20230313) .docx (ganjoho.jp)
10年純生存率:院内がん登録2010年10年生存率集計 国立がん研究センター(2023年3月)
2010_10y_全文(20230320) (ganjoho.jp)

乳がんの治療

初期治療法

初期治療法乳がんと診断を受けたあと、最初に受ける治療のことを指します。
手術、放射線治療などの局所治療、抗がん剤治療やホルモン療法などによる全身治療があります。

乳房の手術療法

乳がんのある乳房に対して行う手術療法には、以下のような術式があります。

乳房温存手術

しこりとそのごく近くの組織を含め、乳房の一部を切除する手術です。

乳房切除術

大胸筋・小胸筋は残しますが、すべての乳房を、乳頭を含めて切除する手術です。

乳房再建手術

人工乳房(インプラント)や自家組織によって、乳房を再建する手術です。

腋窩リンパ節の手術療法

乳がん細胞がリンパの流れに乗って、腋の下の(腋窩)リンパ節に転移した場合に、乳房の手術と一緒に行われる手術です。

センチネルリンパ節生検

リンパの流れが最初に行き当たるリンパ節を「センチネルリンパ節」と呼びます。
手術の際に、このセンチネルリンパ節で生検を行い、がん細胞がないことが確かめられれば、腋窩リンパ節に対する手術は必要なくなります。

腋窩リンパ節郭清

リンパ節とまわりの脂肪を一緒に取り除く手術です。大胸筋の裏側のリンパ節を一緒に取り除くこともあります。

薬物療法

乳がんは、薬物によって良い結果が得られやすいがんです。
生検で調べた組織の状態、手術で切除したがんの状態に応じて、以下のような薬剤を使用します。

ホルモン剤

女性ホルモンを取り込み増殖するタイプのがんである場合には、ホルモン剤の投与が有効になります。

抗がん剤

抗がん剤を投与し、細胞の活動を抑制します。がん細胞や正常な細胞よりも活発に活動するため、抗がん剤の成分が行きわたりやすいことを利用した治療です。

分子標的治療薬

特殊なタンパク質(HER2)で覆われている乳がん細胞に有効な薬剤です。
薬剤がHER2と結びつくことで、がん細胞の活動が抑制されます。

放射線治療

放射線治療は、乳房温存手術の後に残った乳房での再発を防ぐために行われます。乳房温存手術を行う場合には、基本的に放射線治療とセットになります。
その他、リンパ節への転移が多数認められるケース、手術部位付近での再発のリスクが高いケースなどでも、放射線治療が行われます。

乳癌術後のフォロー

乳がん術後の治療が必要な理由

乳がんの手術を行っても、がん細胞が完全になくなるとは限りません。再発のリスクを少しでも減らすためには、手術後のフォローが必要になります。

非浸潤がんだった場合

乳房温存手術の場合には、放射線治療を組み合わせます。
手術後の病理検査で浸潤が認められた場合には、「浸潤がんがあった場合」と同様のフォローが必要になります。

浸潤がんがあった場合

乳がんのサブタイプに応じた薬物療法を行います。
サブタイプとは、細胞が持つ遺伝子の特徴に応じて、乳がんを分類したものです。

サブタイプ別の治療法

サブタイプに応じた薬物療法を選択することが、再発防止のためには欠かせません。

ホルモン受容体陽性 ホルモン受容体陰性
HER2陰性 低増殖能 ルミナールA
(ホルモン療法)
トリプルネガティブ
<抗がん剤療法>
高増殖能 ルミナールB(HER2陰性)
<ホルモン療法+抗がん剤療法>
HER2陽性 ルミナールHER2
<ホルモン療法+抗がん剤療法+分子標的療法>
HER2タイプ
<抗がん剤療法+分子標的療法>
Luminal A (ルミナールA)

ホルモン療法を行うのが基本です。
乳房切除手術でリンパ節転移が多数認められた場合、乳房温存手術を行った場合などには、放射線治療も必要になります。
なお、術後検査でルミナールBと判明した場合には、抗がん剤治療も検討します。

Luminal B (ルミナールB)

抗がん剤治療、ホルモン療法を行うのが基本です。
放射線治療が必要なケースでは、抗がん剤治療の後に行います。ホルモン療法については、放射線治療と一緒に受けることが可能です。
進行の程度によっては、分子標的治療薬の使用を追加することがあります。

Luminal HER2 (ルミナールハーツー)

抗がん剤治療、分子標的治療、ホルモン療法を行うのが基本です。
放射線治療が必要な場合には、抗がん剤治療の後に行います。ホルモン療法については、放射線治療と一緒に受けることが可能です。
また、術前の治療として抗がん剤治療を行った場合には、その手術後、分子標的治療とホルモン療法、放射線治療などを行います。

HER2 (ハーツー)

抗がん剤治療、分子標的治療を行うのが基本です。
放射線治療が必要な場合には、抗がん剤治療の後に行います。
術前の治療として抗がん剤治療を行った場合には、その手術後、分子標的治療や放射線治療を行います。

Triple Negative (トリプルネガティブ)

抗がん剤治療を行うのが基本です。
放射線治療が必要な場合には、抗がん剤治療の後に行います。
術前の治療として抗がん剤治療を行った場合には、その手術後、放射線治療を行います。

術後の再発治療

術後の再発治療乳がんの手術後には、再発を防ぐためにさまざまなフォローを行います。
転移や再発が見つかった場合には、がんのタイプに応じた治療が必要になります。その治療方針は、「局所での再発」であるか、「遠隔への転移」であるかによって変わってきます。

局所再発

局所再発の場合は、再度の手術を検討します。術式は、乳房切除術が基本です。
最初のがんの治療の際に放射線治療を受けているケースにおいては、再発治療にて放射線治療を組み合わせることはありません。同部位に放射線治療は1回というのが原則であるためです。ただし、それ以外の部位に転移しているケース、痛みを抑えることを目的としているケースでは、再度放射線治療を行うこともあります。

遠隔転移

遠隔転移の場合には、薬剤を使った全身療法が行われます。乳がんの場合、転移しやすい臓器として、リンパ節、骨、皮膚、肺、肝臓、脳などが挙げられます。
ただ、乳がんが転移した場合には微小ながん細胞が全身に散らばっていることが多く、手術ではなく全身療法が必要になるのです。
このケースでは、がんを完全に治すことは現実的に困難となります。がんをいかにコントロールし、患者様らしく生きていくかということが、治療の大きな目的となります。痛みや苦しさがある場合には、緩和療法も検討されます。

遺伝性乳がんについて

家系内に、がん患者さんが多い家系が昔から知られており、親から子へ受け継がれる遺伝子変異(異常)が原因で、特定のがんを発症しやすいことがわかってきました。乳がんについても発症リスクが高くなる遺伝子変異が判明しつつあり、最も多い異常がBRCA1およびBRCA2遺伝子変異です。

HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)

BRCA1/2遺伝子の病的変異により乳がんや卵巣がん発症リスクが高い状態やがんを発症した状態を遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と呼んでいます。
乳がん患者さんのうち3~5%、卵巣がんでは10~15%がBRCA1/2の遺伝子変異が原因です。このどちらかの遺伝子に変化がある場合、80歳までに乳がんを発症する累積リスクは約70%、卵巣がんではBRCA1に変化がある場合44%、BRCA2に変化がある場合は17%と言われています。

BRCA1/2 遺伝子診断

現在、乳がんと診断された患者さんに対して、採血によるBRCA1/2遺伝子診断が保険適用になっております。保険適応の条件は
1. 45 歳以下の発症
2. 60 歳以下のトリプルネガティブ乳がん
3. 2 個以上の原発乳がん発症
4. 第 3 度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者がいる
5. 男性乳がん
6. 卵巣がん、卵管がんおよび腹膜がん既発症例
と従来からの PARP 阻害薬オラパリブ(リムパーザ)に対するコ ンパニオン診断の適格基準を満たす場合となります。
そしてさらにBRCA1/2遺伝子変異のある、HER2陰性の再発高リスク早期乳がん患者さんの術後薬物療法として新規薬物オラパリブ(リムパーザ)が2022年に適応になったことから、BRCA1/2遺伝子検査を受ける患者さんが増えることが予想されます。
費用は3割負担で約6万円と高額ですが、高額医療の限度額の適応となります。

To Top
075-212-8700 WEB予約 お問い合わせ